昨日(2月11日)、神戸で「ユング心理学誕生 1912−1925」と題した公開レクチャーを開催しました。関西だけではなく、東京や九州からはるばる足を運んでいただいた方もおられたとのことで、感激の至りとはこのことです。「ユングはフロイトの弟子だったか?」「ユングの心理療法とはどのようなものだったか?」「私は本当に〇〇的〇〇タイプだろうか?」の3つのテーマに沿って、ユングおよびユング心理学におけるもっとも重要な時期である1912年から1925年のユングの経験と仕事についてお話ししてみました。貴重な休日の午後を費やした価値のある内容になっていたらいいのですが。
なお、同じ内容のレクチャーを3月1日に仙台でも開催する予定になっています(お申し込みはこちらから)。こちらも多くの方がすでにお申し込みいただいているようですので、楽しんでもらえるように、改めてしっかり準備しておきますね。

この公開レクチャーは3月から始動予定のスタディ・グループ「神戸分析心理学クラブ」のオープニングイベントとして企画したものです。この会はユング心理学に関心をもつ臨床家・学生のための交流とグループ学習の場として、2020年3月から3年間限定での活動を予定しています。
会は月2回活動します。
1)火曜日 19:00-20:00
ユング心理学の最新論文の読書会。Journal of Analytical Psychologyに過去数年以内に掲載された論文を毎回1本とりあげて議論します。
心理療法の中でも特に長い歴史を誇るユング心理学ですが、そのぶんどうしても勉強が古典に偏る傾向があります。もちろん古典の学習は大切です。しかし、私たちがいま生きている世界にユング心理学がどう関わっていくのか考えるためには、最新の研究に触れることが欠かせません。そしてそのためには──まことに残念ながら──英語の論文を苦労して読まなければならないのです。
テーマとなる論文は発表担当者(グループ)の希望で決めますが、必要におうじて論文の選択をサポートします。発表担当者(グループ)は論文冒頭のアブストラクトを翻訳したものを事前に参加メンバーに配布してください。
会当日は発表担当者(グループ)が論文の要約と考察を発表し(20分)、残りの時間(40分)を参加者どうしの議論に当てます。
発表者は論文をできるだけしっかり読み込み、可能であれば関連する他の文献にも目をとおし、論文の内容を著者に代わって説明できるよう、理解に努めてください。そして自分や世界にとって、その論文にどのような価値があるのか、あるいは問題があるのか、自分なりに考え、その意見を勇気をもって披露してください。この後半の場面では「思考」よりも「感情」の機能が求められています。「感情機能」とは価値の判断にかかわる知的な能力なのです。
発表後は参加メンバーどうしの議論です。参加メンバーは事前に当該の論文を読んでいてもいなくてもかまいません。発表をよく聞き、その趣旨をできるだけ正確に理解した上で、論文の著者や発表者の見解にどのような価値があるか、それとは異なる価値を見出せるか、あるいは賛成できないのはどのような点か。発表者同様、自分の判断を述べてみてください。こちらも大切なのは思考機能と感情機能の両方、別の言葉で言えば知性と勇気です。

2)日曜日13:00-17:00
こちらは2部構成になっています。
2−1)読書会 13:00-14:00
ユング本人の著作を中心に、ユング心理学の重要文献の読書会を行います。こちらは英語論文ではなく、日本語に翻訳済みのものを中心にピックアップする予定です。
形式は上述のものと同様です。論文の内容全体を正確に要約する必要はありません(できないですからね、そんなこと)。扱う論文は何十年、場合によっては100年以上前に書かれたものです。その古い文章が、いま、この世界の中でも価値を持っているのか。それはどのような価値なのか。あるいはそれは批判的に乗り越える必要があるものなのか。それを考える場にしましょう。
…長くなってしまったので、日曜第2部のワークショップ形式のスタディグループについては、また次回ご説明しますね。