今回は日曜後半、ワークショップ形式のスタディ・グループについてのご説明から。
2−2) ワークショップ 14:20-17:00
「おとぎ話の心理学的解釈」と「言語連想実験」を中心にした勉強会を行います。チューリッヒ留学中、訓練のプログラムで特に重視されていたこの2つのテーマは、どちらもグループ学習が推奨されていたという点でも共通していました。それを日本に帰国してからも続けたいと思ったというのが「ユング心理学の勉強のための臨床家どうしのスタディ・グループ」というアイディアを思いついたそもそものきっかけなのです。
「おとぎ話の心理学的解釈」はユング心理学の「きほん」の「き」。「おとぎ話の解釈ができないユング派の臨床家なんて、法律の条文を丸暗記しているだけの法律家と一緒だよ」と、チューリッヒのある分析家は笑っていました──いまではぼくもそう思っています。ユング心理学の最大の特徴である「集合的な心」について考えるうえで、おとぎ話以上の素材は考えられず、「集合的な心」という視点のないユング派の臨床などというものは考えられないからです。
初回(3月15日)に「なぜおとぎ話の心理学的解釈が大切なのか?」という内容のごく入門的なレクチャーを行い、次回以降は参加者、もしくは少人数のグループで、おとぎ話の実際の解釈に挑戦し、それを毎回発表・議論していきます。取り上げるおとぎ話は発表者(グループ)が決めますが、もちろん必要なアシストは行います。

フォン・フランツの入門書。この本は翻訳も出ていますが(苦労してでも)英語で読むのがおすすめです。
「言語連想実験」はユングの原点と言える研究です。今日の臨床現場では──いろいろな理由で──使われる機会が少ない、歴史的な心理検査ですが、ユング派の訓練ではいまでもきわめて重視されています(言語連想実験のレポート提出は必須科目)。ただし、ユングの言う「コンプレクス」や「無意識」を理解するうえで、この言語連想実験を外すわけにはいきません。そしてこの言語連想実験、じつはいま「ホット」なテーマでもあります。ユング心理学の分野でも盛んにおこなわれるようになってきた実証研究のツールとして用いられる機会が増えてきているのです。
実際のワークショップでは、発表者をひとり決め、事前に臨床現場でこの言語連想実験を実施してきてもらい、その素材をもとに、データの整理と解釈の方法を実践的に学んでいきます。

ユングが自身で使っていた言語連想実験の刺激語リスト。よーく見るとある法則性が。。。
発表者は当該の回の前月の参加者の中から決定します。ですので、発表を希望される方はその前の回にも必ず参加するようになさってください。
3月はスケジュールの都合上1回(3月15日)のみの開催となりますが、以降は原則(1)毎月第1火曜の夜、(2)毎月第3日曜の午後の予定で活動を開始していきます。ひとまず3月~7月でワンクールとなりますが、可能であれば9月から2020年度後期のグループを開始する予定です。2月16日よりメンバーの募集も正式に開始しますので、どうかよろしくお願いいたします。
最後に大切なことを。「おとぎ話の心理学的解釈」も「言語連想実験」も、分析家のキャンディデートである私(大塚)自身がまだ勉強している最中であり、だからこそそれを一緒に勉強するための仲間を募ろうというのがこの会の趣旨です。講師としてこれらの方法を「教える」意図はありません──そんな資格もないし。したがって参加される皆さんには、主催者である私と変わらないくらいの、かなりアクティヴな関与をお願いしなければなりません。この「アクティヴ」な姿こそ、いまユング心理学をリアルなものにする鍵なのではないかと思ったりもするわけですが。
追記:私たちは「事例検討会」は行いません。異なる現場や経験を持つ者同士の、かつユング心理学という「学派」を前提としたスタディ・グループで「事例検討会」を行うことには、むしろ弊害の方がはるかに大きいと考えられるからというのがその理由です──もちろん大塚の個人的意見です。弊害としての「個人カウンセリング原理主義」と「訓練という名の搾取」の問題については…また別の機会に。