Map of the Soul: Persona
マリー・スタイン先生 インタビュー
マリー・スタイン先生 インタビュー The Map of the Soul: Persona
心理学とK-ポップがお互いの境界を超えて交わり合うのを目にする機会はそれほど多くない。けれども、この2つの世界のおそらく最高の形での出会いを、BTSは請け負っている。BTSは発売予定のアルバムを「Map Of The Soul: Persona」と名づけ、そうすることでカール・ユング(分析心理学の創始者であるスイスの精神科医)に関するマリー・スタイン博士の研究と著書を世間に広く知らしめた。スタイン博士御自身はInternational School of Analytical Psychologyの分析家。先日、インタビューを通じてBTSについて語ってくれた。「Map Of The Soul: Persona」に関するマリー・スタイン博士のコメントは、待望の次回作にBTSがこの名前をつけた理由について、たくさんの理解をもたらしてくれるものとなっている。
スタイン博士のコメントに取りかかる前に、大切なこととして。スタイン博士が『ユングによる心の地図:入門書(邦訳:「ユング 心の地図」青土社)』という本を執筆したのは、1998年(ジョングクがだいたい1歳だった頃)にまで遡る。BTSはこの本をウェブサイト上で推奨し、そのことは同書がAmazonの精神分析部門で第1位を獲得することの助けとなった。
ユング派分析家とのインタビューのポッドキャスト、「ユングを語る」。エピソード42では、司会のローラ・ロンドンがスタイン博士と一緒に、BTSの次回作におけるユング心理学のテーマについて話をした。多くの尊敬を集める医師であるスタイン博士はそこで、RMの国連での素晴らしいスピーチ「制限などない世代」を取り上げている。スタイン博士によれば、このスピーチはユング心理学のテーマを内包したものなのだ。2018年10月──BTSのニューアルバムのコンセプトが判明するずっと以前のことだ──にまで遡ってこのスピーチについて改めて考えてみると、BTSのアルバムのコンセプトを作る上でRM、ジョングク、ジミン、V、シュガ、J-ホープ、ジンの7人が注いだ関心と努力の度合いは、よりいっそう印象的なものとなる。
「キム・ナムジュン、またの名をRM──BTSのリーダーですよね──が国連でスピーチをした際、私は彼の話にとても感銘を受けました。印象的だったのは、韓国のソウル郊外の小さな村で育つ少年だった頃の自分と、現在の公的存在としての、そして有名人としての自分との間に、彼が慎重に区別を保っていたということです。芸能界のスターだというのにね。もしもRMがいまの自分の役割とまったく同じ存在になろうとしていたなら、彼は自分自身との、かつての自分である少年との、そしていまの自分の人間としての存在との接触をすっかり失ってしまうことになります。拠り所を失ってしまうのです」
拠り所を失うということが「自己」との接点を失うことにどう繋がるのかを説明した後で、スタイン博士はファンからの質問を取り上げ、BTSのアルバムが彼の本にちなんだものだということを知った経緯について話してくれた。
「1週間ほど前だったかと思うのですが、突然、彼らのニューアルバムのタイトルが「Map of the Soul: Persona」だと教えてもらったんです。びっくりしてしまいましたよ。それから歌詞について話し合っているARMY──ファンのグループ──の方から連絡があって、それで私もBTSについては少し詳しくなったんです」
ただし、スタイン博士はそれで終わりにはしなかった。BTSがユングのメッセージを広めているということ、そしてそれがどれほどの影響力を持つものなかを聞いて嬉しく思った理由について、スタイン博士は詳しく話してくれた。
「彼らがユングや私の本に興味を持ってくれているということ。ユングについて耳にすることも、ユングが示したことに注目することもけっしてなかったはずの人たちに、彼のメッセージやものの見方が伝えられているということ。私はそれを本当に嬉しく思っています。ユングが21世紀に示さなければならないのは、自分とは欠けるところのない全体としての存在なのだという見方、自分とはひとつのまとまりある存在なのだという見方、そして人権のことだというのが私の考えです。ですので、ユングの考えに触れ、勉強し、日々の生活の中に取り入れるというのは、世界中の人々にとって、とても価値のあることだと思います。ユングのメッセージはとても希望に満ちたものです。私たちの意識は一瞬の光のようなものだ、と。きちんと注意を払えば、彼のメッセージは私たちにたくさんのものを与えてくれます。それは私たちに心の内側の案内役を与えてくれるものであり、そして一人一人の個人が神聖な存在なのだということ、地球や世界のために責任を負うためには一人一人の個人が大切な存在なのだということを強調するものでもあるのです」
間違いなくBTSにはこのアルバムに関する明確なアイディアと意図があるようだ。でも、驚く人なんているだろうか? 音楽を作るにあたって、BTSはいつだってとても思慮深かったのだから。そして今回、彼らはマリー・スタイン博士という新しいARMYを手に入れたらしい。
(注:これはelitedailyに掲載されたBTSのニューアルバム「Map Of The Soul: Persona」に関する記事の中の、マリー・スタイン先生のインタビュー部分を翻訳したものです。
https://www.elitedaily.com/p/dr-murray-steins-comments-about-bts-map-of-the-soul-persona-are-so-insightful-16983771
スタイン先生および、インタビューを行ったLaura Londonの許可を得て、日本語に翻訳したものをここに公開しています[大塚紳一郎])
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